外交団のマッチョ集団

プールサイドのパーティーにRiekoと繰り出した。

女性が少ないだろうパーティーでは登場した瞬間に注目が集まる事間違いない。おまけに赤と黒のフラメンコトーンで肌露出度の高い服を着たRは愛想が良い上にわりと来る者拒まずだ。「あそこの集団かっこいいですね。」と指す先はどう見ても20歳くらい。子供だからほっておけ、と言うのに、「かっこいいなあ」を繰り返す。選曲は良い方なパーティーだから、フロアで2人で踊りだす。ここでもまたRはリズムに乗って腰や腕を艶かに動かし、なにしろ目立つのだ。

 一休みしにフロアから降りた瞬間にRが「かっこいい」と言っていた集団が5、6人で寄ってきて話しかけてきた。するっと私は一人でバーに逃げる。モヒートを啜っているとRが私のところに戻ってきた。「あの人達、ヨルダン大使やパレスチナ大使館員の息子で身分は学生ですって。20歳とか23歳ですよ。こっちが30過ぎていると言ったら「本当に?」って驚いた後話しが続かなくなりました。」だから言ったろ。

 人も増えて、色々な人と踊ったり話しかけられたりしている内に2人でふと気がついた。集まるのはほとんどが大使館の警備か領事関係者だ。そして集団で固まっているトルコの建設業者の人達。外交団のマッチョなブルーカラー属の集まりなわけだ。こんなところで「ルールズ」を適応しようものならば押しの強い輩の誘いだけを受ける事となるのでは?しばらく通じない英語と基礎スペイン語で話した後「アイ・ラブ・ユー」と通りすがりに呼びかけるスペインの警察官、「失礼します、友人と4人で踊って頂けますか」と寄って来たチェコの領事担当、「ダンスをよろしいですか、これはスローですから」と腰を取るフランスの庶務主任、「君はダンシング・クイーンだ。」と電話番号を帰り際に聞き出そうとするトルコの領事。アメリカ人かと思って踊ってみると訛りがあるイギリス大使館のアフリカ系の推定現地採用。きれいな顔つきだけど、言葉の問題で話しが続かないトルコのジェネレーター技師。

 熱烈なラブコールを何度か発していた、以前一度だけご飯を食べたおじさんもいた。Rに愛想良く挨拶すると、私には話しかけないからちょっとほっとする。少なくともこの人は国際機関の上層部で医師だから話はつづく。だけどもう会話をすることもないようだ。もちろんドイツの警察官もいた。「おい、この前は何で食事断るんだよ。」と話しかけてきた。『だから既婚者とは2人でご飯食べないのよ。あなた私には離婚しているって言っておいて本当は結婚しているらしいじゃない。』「例外つくってよ。俺可哀想だから。君に酔っていない自分を見せるためにここ数週間禁酒しているんだ。可哀想だろう。酒は飲めない、セックスはできない。出かける事も出来ない。寿司一回くらい一緒に食おうぜ。明日行こう、明日。」翌日の誘いを受けるのは「ルールズ」違反である。『月曜日なら大丈夫かもしれない』、と久しぶりの寿司に釣られる。『まあ、友達としてのご飯ということではっきりさせてなら食べに行こうか』、と言うと「そんなのだめだよ。男女には友情なんて存在しないんだぜ。俺には一人だけ昔からの女友達がいるくらいかな。」人は悪くないから言われるがままに携帯番号を渡して、断る口実はあらためて考えようとその場を凌ぐ。そういえば以前、ご飯を一緒に食べた30歳のカナダ人も領事担当だった。いわゆるキャリア外交官の人達は、こういう場にあまりいないようだ。次回のワイン・テイスティングにちょっと期待。