自分の顔のアンパンを渡された。

パンを焼いたので、要りませんか、と言われたので大喜びで取りに行った。焼きたてのロールパンかしら、パイ生地かしら、と思いを巡らせていると「ちょっと待ってください」と出てきたのは手のひらより一回り大きな顔。「似てませんか。」私の顔だそうだ。小学生の男の子からもらったならば大喜びだが、30代の男性、しかも料理のプロに私の顔のアンパンをもらうたあ思っても見なかった。昼ご飯にアンパンマンよろしく顔の片側をちぎって食べた跡をRに見せた。また例のごとく「私は自分の顔のパンなんてもらったことない。」と拗ねてみせるが、欲しいのか、本気で。「好きなんじゃないですか。でなきゃ人の顔なんて作りませんよ。」そんなことはない。多分身近で働いている老若男女の顔を作ったと思う。事実洗濯おじさんの顔も見せてくれた。
 それはそうと、土曜日に米系のパーティーがあるけど行っとく?とRに聞くと、土曜日はアダモをデートに誘おうかと思っているんですとメールが返って来る。なんだそりゃ、アダモの国では女性から誘うのかい?シリアの姉さん達にそういうものだ、と聞いてやる気を出しているらしい。あちらの方の男性は初期のアプローチは積極的だが、その後は女性から誘うものだそうな。変なの。放課後給湯室で会うと、「やっぱりどうして私が誘わなきゃいけないのかって考えちゃいました。携帯メールも翌日一回来ただけだし。やめよ。米系パーティー行きますか。」最近絡んだ率はアメリカ人が断然多いので米系はかなり虎穴に入るかんじになってきた。そこに虎児はいないと思うのに。というわけで職場の新人男性にも声をかけておく。一緒に行く訳じゃないけど、現場にいれば面倒な相手を適当に捲いて逃げる先となる。Rは職場の男性を誘うのを渋った。悪事が職場で伝わるのを恐れているらしい。何を今更、この小さな街で。まだRに30歳回教徒と茶をしばいた事は言っていない。そして回教徒にはバンコクに行かなかった事を言っていない。