偽名はそれらしいものにして下さい。

トルコ大使館の軍のレセプションの招待状が来てた。ドレスコードはダークスーツ。仕事着にするか、女として行くか、かなり迷ったけど暑くて湿度が高いので後者を選択。会場につくと、若い職業婦人達はすぐ分かる。仕事着にちょっとアクセサリーを付けた感じだから。まあ、いいや、仕事の話するわけじゃないから、と思っていたら「あーら、初めて見るわね。」ととあるアジア系の奥様。「私はミャンマーから、あなたは日本人?」と聞かれて、ああ、ここにいる女性の大半の様に軍人の妻だと思われているのだ、と察する。だから働いている事を告げると会話が続かない。そして頭の中ではスーチー対軍事政権の構図がぐるぐる回っているから言う事も思いつかない。次に話しかけられた濃い集団にはイラクのバッジを付けている人がいるから分かりやすい。笑顔で話しかけてきたおじさまはパレスチナ解放機構。無意味にちょっとパニクる。あれ、この人に名刺渡して良いんだっけ?でもやはり何を話して良いのか分からん。私が唯一遊びにいったあそこらへんの国はイスラエルだし。しかし、ここで出逢いを期待している私も莫迦です。じゃあ、いつもの仏系パーティーにはあるのか、というともちろんそれはない。

 そのままRiekoと仏系に流れると、いるはいるは、警護団集団が入ってきた私とRを嘗めるように視線が上下を往復する。さすがに戸惑う。隣国にいるHちゃんが、警護系はすぐにこの視線で分かる、と言っていたがまさにこれ。そして可愛い顔をした若いイタリア人が「覚えている?」と寄って来る。とっさに聞かれても分かる訳が無い。「僕は君の事を忘れていないのに、君は僕を覚えていないんだね。」いやいや、顔は覚えていた、と弁解する。しかし、英語の語彙数も文法も弱くて、話している事もよく分からない。「ここで彼氏は見つかったの?」と言う質問に嘘をついておけばいいものを、「さあ」と誤摩化す。明らかに、不在と言っています。「僕はまたパーティーじゃないところで君と会いたい。」を繰り返す彼に「That is very nice of you.」と答えるが先方が分からない。「That is nice.」と言い換えそうになって、まずいまずい、誘いを受けると思われると面倒だ。と打ち消した。どっちみち、この微妙な違いは分からないのだが。途中、踊っていると密着してきて「You are beautiful.」と言うから「You are Italian.」と返す。イタリア人にとって美しい、は「今日は暑いね。」と同義語。だからまあ私も「暑いね。」と返せばいいのを「夏だからね。」と続けているのだ。けっこう無粋。
 
 Hちゃんの彼氏であるまともなイタリア人から、イタリアの警護官の中での悪評のランキングを教えてもらっていたから悪ふざけに乗る気もおこらなかった。悪事は歳とともに重ねていくらしいから、この20代後半のイタリア人はまだ中級者程度らしい。しかし、女性を性的処理の対象としか見ていない事には変わりはなし。そっか、ちょい悪オヤジ達は私が面倒なことが分かるから代わりに子供が寄ってくるのか。連絡先をくれ、というからあなたの名刺を頂戴、と言うが立場上名刺を刷っていないのだと言う。間を置いて、彼が紙に自分の番号を書いて持ってきた。気の利いた事が書いてあったりするのかな、と帰宅後見ると、イタリア大使館Johnとある。なんでお前がジョバンニでもなくジャコモでもなくジョンなんだ。Hちゃんの彼氏が今度Hちゃんが来たらイタリア料理を作ってくれると言ってくれた。頭はそれで一杯。色気の無い話だ。