活動開始してみているけど

 本拠地に戻り、まずは英系パーティーに繰り出す。最近はとみに命懸けで遊ばなきゃならないが、戦時中のベルリンのデカダンスみたいに楽しんでしまおうと思っている。同じ思いの人は街にあふれているらしく、懐メロとも言えない毎度同じの選曲で演奏するアマチュアバンドの演奏を聞きに、大勢の人が集まった。すると当然今までの「ゆかいな仲間たち」のオンパレードである。しかし、堅物の私は彼らとの距離感の取り方がうまい、と一人悦に入っている訳だが、この距離感については「もっと人生楽しみなさいよ!」と言っていたゲイ友達には内緒にしておく。
 その夜はバンド演奏終了後に好きな曲がかかると、歳よりだいぶ若く見える50代既婚のアフリカ系アメリカ人の技術系外交官と踊っていた。途中、日本語をかじった若造海兵隊員と踊るが、スキンシップが過ぎるので逃げる。西仏人にも久しぶりに会う。礼儀正しい「アラブの王子」も踊るとちょっと雰囲気が怪しくなる。時間も遅いのに、アパートで一杯どう?と礼儀正しく誘われた。「ちょっとここを抜けようか」と言うには自宅に帰るしかないので仕方が無いと言えばそうなのだが、それにほいほい着いていくわけにもいかない。でもそれ以前に若すぎるし、また必ずや顔を合せる事を思うと冒険もできない。
 Hちゃんのイタリア人の彼のPの友人のカメラマンが、「僕のモデルにならないか。」と言う。政治的な被写体が無いのでそろそろ帰国するという彼である。「君という人間は誰なんだ。」「日本人である君というコンセプトを撮りたい。」「君は僕に何を与えてくれるのか。」Pに英語を英語に訳してもらい、イタリア語でも聞き返すが通訳も意味が分からない。プロのカメラマンが写真を撮ってあげるから金銭的な見返りを寄越せということか、というと精神的な見返りだ、と言う。まったくもって分からないが、この禅問答みたいなやり取りが妙に気に入った。